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火薬・爆薬入門

「火薬」と「爆薬」って何が違うの?

ライトノベルや漫画・アニメ・映画などのフィクション創作物には、銃器や火薬がたびたび登場します。みんな鉄砲大好き。爆弾大好き。

銃器や火薬・爆薬を扱うキャラクターですぐに思い浮かぶのは、軍人や警察官、犯罪者、テロリスト。

最近は女子高生も銃をぶっ放すし、戦車を走らせる。世も末ですw

果ては銃器が女の子になったり(擬人化)。ワケワカラン

訳がわからなくても、作品が面白ければいいんです。書く人が面白く、読む人も面白い。エンタメってそういうもんですよね?

火薬に関わる職業・キャラクターいろいろ

  • 軍人
  • 警察官
  • 消防署員(危険物や火薬類の取締りは消防のお仕事)
  • 武人(武士とか騎士とか傭兵とか)
  • 火薬メーカー
  • 玩具メーカー(花火やモデルガン)
  • 花火師
  • 錬金術師
  • 化学者
  • 発破技士
  • テロリスト
  • 犯罪者

「火薬」「爆薬」ってなんだろう?

「銃弾や花火に使うのが火薬」「爆弾や砲弾、発破など爆発する(ぶっ壊す)のが爆薬」というのが、一般的な(シロウト的な)認識・分類でしょうか。

というか、一般人は火薬と爆薬、何が違うのかなんて気にもしていないでしょう。

火薬類取締法という法律では、火薬と爆薬は性能や性質・成分、用途によって厳密に区別されていますが、化学的には必ずしもはっきり分けられるものでもありません。

火薬と爆薬、どちらも英語ではexplosive(爆発物)。

武器に使われる火薬をgunpowder(銃用の粉)と呼んだりもしますが、これは用途と形状由来の呼び名ですね。

広辞苑(第六版)によると火薬は次のように定義されています。

衝撃・摩擦・熱などによって急激な化学変化を起こし、多量の気体と熱とを発生することにより、推進・破壊などの作用を行う化合物、または混合物

「急激な化学変化」で発生する「多量の気体と熱」を利用して「推進・破壊」という結果を得るための「物質(化合物・混合物)」が火薬で、その化学変化は「衝撃・摩擦・熱」などの力が外部から加えられることで引き起こされる、と。

そういえばガソリンだって爆発します。ガソリンも火薬の一種なのでしょうか?(ちがうよ)

みなさんご存知の通り、ガソリンエンジンのシリンダーの中では、霧状のガソリンと空気の混ざった混合気がひたすら爆発し続けることでピストンを動かし、車輪を回転させています。

ガソリンが燃焼・爆発するためには空気(酸素)が必要なんです。つまり、ガソリンは外部から酸素を取り込むことで爆発しているわけです(圧力と電気火花も必要)。

燃焼・爆発とは、可燃物(この例ではガソリン)が、空気中の酸素原子と結びつく現象(酸化反応)が急激に発生することであり、その際に多量の気体と熱が発生する現象です。

火薬・爆薬がガソリンなど他の爆発物と大きく異なるのは、酸素の出どころです。

火薬・爆薬は、それ自身の中に酸素(酸化剤)を含んでいるので、外部からの酸素供給が必要ない。

熱などの条件がととのえば、酸素の無い真空の宇宙空間や水の中でも燃焼するのです。

宇宙ロケットがエンジンを切り離したり、人工衛星を放出するためにフェアリング(ロケットのカバー)を吹き飛ばすのにも火薬を使いますし、花火は水中でも燃えます。

反動がものすごいので実用的ではありませんが、酸素の無い宇宙空間でも銃は撃てます。薬莢の中の火薬に酸化剤が含まれているから。

関係ないけど、ソ連時代のロシアには宇宙飛行士用の銃もありました(地上で敵地に落ちた時の護身用だけど)。

火薬や爆薬が燃焼・爆発する化学反応は、火薬自身に含まれる可燃物と酸化剤が結合する酸化反応です。

中学校の理科で習った酸化・還元反応の酸化の方。メラメラ燃えるのも酸化反応だし、鉄が錆びるのも酸化反応ですが、火薬・爆薬の酸化反応は「急激に」進行するのが特徴です。

酸化反応がマイクロ秒~分単位で進行する現象を「燃焼(combustion)」と呼びます。

燃焼のうち、反応速度がミリ秒(1,000分の1秒)くらいだと「爆燃(ばくねん、deflagration)」、もっと速くてマイクロ秒(100万分の1秒)だと「爆轟(ばくごう、detonation)」。

なんかカッコいい。中二心がくすぐられます。戦隊モノやライダーの背後で爆発している時に決めポーズで「ばくごうっ!」って言わせたい。

爆燃するのが火薬、爆轟するのが爆薬。だいたいそんな感じです。爆燃よりも反応速度が遅い火薬もありますが。線香花火とか。

爆燃と爆轟のざっくり比較

爆燃(delfagration)

  • 火薬取締法の分類では火薬
  • 酸化反応の速度はミリ秒単位
  • 反応の伝播速度は1km/s 以下(遅い)
  • 銃砲弾の推進用途

爆轟(detonation)

  • 火薬取締法の分類では爆薬
  • 酸化反応の速度はマイクロ秒単位
  • 反応の伝播速度は1~9 km/s(速い)
  • 衝撃波がある
  • 爆弾、発破などの破壊用途

これは本当にざっくり。爆薬でも状態によっては爆轟せずに静かーに燃焼することもあります。

例えばラノベや漫画、映画によく出てくるTNT。爆薬といえばダイナマイトかTNTかってくらいメジャー。

TNTは火をつけただけだと静かに燃えます。

燃えている最中に衝撃とかの強い刺激を与えると爆轟します。

つまり、爆轟するかどうかは状態次第。

TNTを一斗缶に入れて焼却処分している時に、火鉢で引っ掻き回しちゃだめです。というか焼却処分しちゃだめです。TNTを処分したい人はお住まいの自治体に相談してください。

【衝撃映像】 100トンの爆薬による爆轟波

あと、爆轟するかどうかは密閉度も影響します。例えば鉄管にTNTを詰めて衝撃を与えると爆轟します。

特殊部隊や工兵が敵地に侵入して鉄橋や要塞を爆破するときに使えそうですね。

映画『ナヴァロンの要塞』